行けたから、もう行かない

心にずっと引っかかっていた場所に行った。
苦い思い出が多すぎて、大嫌いな町。
そこには僕のやめた高校があって、どうしようもない自分がいた。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/45627566434
心の清算が終わっていないとずっと思っていて、やっと自分の足で来ることができた。
青春の一ページなんて下らないんだけど、そういう時代の失敗って意外とずっと心のどこかに引っかかっていてトラウマみたいになってしまうことも多いはず。
でも、とある人に「その経験がなかったらどうなっていたと思う?」ってふいに問われた。
きっと自分の好きな音楽も聴いていなかっただろうし、好きな本も人間も、もちろん写真だって変わっていたかもしれない。
それほどドラスティックな経験だったんだ。もう今更戻れないしね。

https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/32478729998
Leica M Monochrom Summaron 35mm/f3.5
どうしようもない僕たちが授業をばっくれて帰っていた”裏”通学路が今でも存在していた。
懐かしくなって歩いていたらギョッとした。今では人目を忍んで帰りたいカップルたちの”裏”通学路になっていた。
通り過ぎていく数組のカップルたちを、まだ下校時間じゃねーだろ…と苦笑いで見送った。


意外と変わっていない大嫌いなこの町にもうわざわざ来ることはない。
自分の気持ちに決着をつけるための口実にLeicaを付き合わせた。
長いことできなかったのに、やっとできた。
フジヤカメラが言っていたね。
「カメラがないと強く生きていけない。」

 記憶の片隅と未練

急に決まった出張で早めに仕事が片付いてレンタカーを走らせていたら、ふと目に留まった地名に馴染みがあった。
小さい頃からよく家族で出掛けて、すごく可愛がってくれるおじさんがいたのを思い出した。
ドライブ好きな家族だったから、休日に車で出掛けるってなったら、よくせがんで連れて行ってもらっていた山の中の小さな資料館。いろんなことを教えてくれた館長のおじさんは10年近く前に亡くなっていたのは知っていたけど、なんか懐かしくて。
いつも父親の運転で行っていて、それこそ最後に行ったのははるか昔のはずなのに記憶はしっかりしていて、迷いもなく酷道と化した道を飛ばした。
携帯も圏外になってしまって、確かめようもないけど、なんとなくもう「ここだ。間違いない。」そんな心境だった。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/31171465787
なんか不思議すぎる気分だった。草木が生い茂っていて向こうが見えないのに、確実にここだったと思った。
草木をかき分けて入って行くと、懐かしい建物があった。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/32239475098
ちょっとした広場になっていたところも完全に草木に覆われてしまっていた。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/31171465837
10年近く時が過ぎて変わってしまったとはいえ、その場所に立つと、記憶が溢れてきて、すこし立ち尽くしてしまった。
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Ricoh GR10 GR Lens 28mm/f2.8 Kodak 400TX


数枚写真を撮ったけど、写真で残されていない自分の記憶こそ残しておきたいと思ったからなんだ。
記憶の蓋が開くというイメージが今回の体験には近いものがあって、やっぱりそれはその場所に行くことで起こるんだろう。
あまり感傷的になりたくはないが、通り過ぎていった日々の記憶は大事だろうがなかろうが関係なしにどんどん薄れていく。
記憶の断片を繋ぎとめておきたいっていう未練が写真という形になるのか。

 機械ってもんはなぁ、壊れるんだよ。

このあいだThe Birthdayのライブに行ったらチバのアンプがめっちゃ良いところで不調になってしまい、アンプ蹴り上げるわ、エフェクター蹴飛ばすわ、ギター放り投げるわっていう近年稀に見るブチギレっぷりを見てしまった。
バンドを残してステージ袖に消えて、慌ただしくローディが駆け回り、戻って来たチバの一言目がこの記事のタイトルだ。


いつも旅先に持って行くカメラは悩むんだけど、特に出張では悩んでいて、今回はRICOH GRとGR10を持って行った。約2週間持ち歩いていて、GR10もご機嫌に動いていたんだけど、どうも巻き上げでジャムってしまって、不調に陥った。
結局フィルム一本分損をしたんだけど、とにかく自分の頭の中はモノクロなテンションだったのに…とショックが大きい。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/32019182138
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/44977102545
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/45840689272
Ricoh GR GR Lens 18.3mm/f2.8
代替としてGRのハイコントラスト白黒で。

今回も縁あって気仙沼に行ったけど、本当にいい街だと思う。
岩井崎の方はかなり整備が進んでいた。以前行った時に破壊されたままの水門があったが、撤去されていた。
通行止になっていた公園も整備されていた。
水産高校の校舎は相変わらず建っていてなにやら工事をしていたので聞いてみると震災遺構として残すらしい。
女川の交番と比べたらえらい大きいものを残すんだなーと思ったけど、記憶って曖昧なもんだし、残せるなら残した方がいいのかもしれない。


新しいRICOH GRが発表されていて、欲しいなと思う反面、まだ手元のGRも全然現役で使えるなーと思う。
ちょっと筐体に歪みがあるのと塗装ハゲもあるんだけど、それこそ壊れるまで使ってみて、代替わりでもいいじゃないかと。
代わりとなる後継機があるって素晴らしい。

 写真の難しい風景

なんか出張で東北へ行く機会に恵まれている割に写真を撮っていないなぁと思った。
今回はバルナックライカとGRを持って行って、少し時間に余裕があったので、女川町に立ち寄ってみた。
駅前から海へと続く街がすごく整備されていて、近くにいた別の被災地から来たであろうおばちゃんたちも「思い切ったもんだねー」なんて話をしながら散策していた。
震災前に来たことのない自分からしたら、元の街がどこからどこにあったとか、そういうのが分からなくて、ただただ整備された商店街を歩いている感じだった。
海の方へ行くと交番が震災遺構として残されている内容の看板が立っていたけど、交番らしきものが一瞬分からず、通りがかりに「あ、この根こそぎ倒れてるやつが交番なんだ」って気づいた。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/45663252122
そこから港まで歩いて行く風景はどの被災地でも見かけるフェンスで囲まれた中を歩く感じで、風が吹けば嵩上げ土が舞っている風景だった。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/45663249422
復興は進んでいる部分もすごくあるんだけど、海辺のフォトジェニックな風景というのが東北ではなくなってしまっていて、なかなかいつもシャッターを切ってなかったんだなぁと気づいた。
とはいえ、気仙沼の汽船乗り場もすごく整備されていたし、色々と変わって来ているんだけど。
なんか色々と考えさせられる。


駅前の広場で、小さい子たちが無邪気に笑って駆け回っていたのがなんか救われたというか、ほっこりした。

 ちょっとどこまで行くんでしょうね

ちょうど写真展をはじめる少し前に、本当に稀有なことが起きてしまって、Leica M Monochromを手に入れた。ま、カメラが増えるときって、たいていは欲しい欲しいと思っているから、そういうアンテナが張ってるんだろうな。普段だったらあり得ないタイミングで出物があったりする。
あとはもう瞬発力、それだけだ。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/31637167428
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/43322126470
世の中にちゃんとしたモノクロが撮れるデジタルカメラって、このLeica M MonochromシリーズとSIGMAのカメラたちしかない。
心情的に、モノクロを撮るときは最初からモノクロの頭になっていたいから、SIGMAのDPシリーズなんかは特に画的には良いと思うんだけどどうも触手が伸びない。
新しいレンズの方が性能を発揮できるのかと思ったけど、手持ちのレンズで一番古いズマロンでも中央部の切れ味は相当鋭くて、オールドレンズとはいえその描写レベルの高さを感じた。


最初はちょっと使って手放すつもりだったけど、何と無く愛着が湧いてきている。
しかし、結構露出がシビアなこともあって、フィルムライカにTri-Xを入れて撮る方が気楽な気もしている。

 いろんな「たり」

無事に写真展が終わって、ちょっとした喪失感に包まれている。
会期までは制作に追われていたこともあって、やっと「祭の準備」感が出て来たのは会期前日だった。
そこからはあっという間で長かった気がする。
搬入をするときのドキドキ感だったり、思っていた通りに白い壁に作品が並んだときの安堵感だったり、人が来てくれないかもしれない不安感だったり、予想外の人が見に来てくれたら喜びだったり、搬出が終わって元の白い壁に戻ったギャラリースペースに寂しさを覚えたり。
色々あった…。
何もないようで素晴らしい二週間だったと思う。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/44266557855
Leica M typ262 Summicron 35mm/f2.0
「次」があるかはまだわからないけど、「ずっとやり続けて行くことが、価値のあることだぞ」って来てもらった人に言われたので、細々とでも展示は続けていきたいなぁと思った。


「写真=プリント」ってここ数年ずっと思って来ていたけど、それはやっぱり間違いではなかったと思う。
わざわざ来てくれた人たち、たまたま来てくれた人たちに感謝。

 写真展を開く

写真をやっていて、楽しい瞬間ってなんだろうか?
色々と想いを巡らせると、人と写真で関われた時っていうのは上位に来るんじゃないだろうか。
企画展やグループ展に出すようになって、もっと自分の思うようにやってみたいと思うようになった。
テーマも機材もフォーマットも自分で選ぶんだ!と…。
思い始めて1年近くが経ってしまったけど、ようやく実を結んだ。
ささやかな展示だけど、今できる精一杯の写真への愛情を注いだつもり。
本日無事搬入終了。

明日から2週間、どうぞよろしく。