それ、プリントしたらどうですか?

SNSやWEBに溢れる写真って、ふとした瞬間に流れていって「あの素敵な写真は何処へ…」となることがある。
「いいね」から辿ろうとしても、例えばそれが半年前のものだったら大変。つい最近、実際にふと「あの人のあの写真見たいな」と思うことがあったけど、結局探し出せなかった。
溢れて消えていく「名残惜しい写真たち」の中から、せめて自分の撮ったものだけでも繋ぎ止めるためにはどうしたものか。
自分はやはりそれはプリントしかないと思っている。
モノとして残る強さっていうのは確実にあると思っていて、いつか見返したい写真は積極的にプリントするようにしている。
撮ったけど、何にもなれていないただのデータって意外とあるでしょう?
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48923517042
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/49003665271
Leica DII Summer 50mm/f2.0 Ilford HP5Plus
Plaubel MAKINA67 Nikkor 80mm/f2.8 Ilford HP5Plus

プリントするかしないかっていうフィルターがまずあって、プリントしたものを残すか捨てるかのフィルターがあって、それを部屋に飾れるかどうかっていうフィルターがかかっていくと、それなりに残っていくものはその時の自分の写真の到達点だと思う。
自分の場合、暗室でほぼ全てが完結するのが楽だからフィルムで撮影したものをプリントすることがほとんどだけど、最近、結構会心だなって思うカットをiPadで人に見せたら「それ、プリントしたらどうですか?」って言われてしまった。
そりゃそうだな。デジタルだろうが印画紙に焼き付けてしまえば写真は写真なんだから。

 ドキュメンタリー

中平卓馬ドキュメンタリー映画を見る機会があった。
ちょうど中平卓馬の写真集をもらったこともあって、相方さんから勧められたんだ。
実は勧められたのは二度目なんだけど、中平卓馬の写真が今までずっと「怖い」と思っていたので一度断った。
でも、結局見て、とても感動してしまって泣きそうになった。


「カメラになった男 写真家 中平卓馬
この中で自分が一番感動したシーンは、沖縄で東松照明の写真展の題目であった「写真の記憶と創造」を激しく批判した場面。
写真はどこまでもドキュメンタリーだっていう姿勢が写真に対してピュアだった。
森山大道も「写真は現実のコピーだ」っていうことを言っていたけど、個人の表現・創造のための写真が巷に溢れかえっている中、中平卓馬の姿勢は痛快だった一方で、突きつけられている気持ちになった。


何を撮るとか、何で撮るとか、誰が撮るとかではなくて、もっと生々しいものが大事なんだと思った。
超抽象的だけど。
山盛りのリバーサルフィルムが映されていたけど、やっぱり数のないところに質はないんだよ。

https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48814969012
帰りに京都大学熊野寮の前を歩いていたら”粉砕”された立て看が束になっていた。


もっと剥き出しの写真が撮りたい。撮れるようになりたい。

 「必ず壁にぶつかるからね」

最近でもないけど、自分の撮りたかった写真ってなんだったんだろうって考えることが多い。
あと、本当に楽しく写真撮れてる?って。

写真展をやって疲れたってのはあるけど、継続して撮り続けていたんだけど、嫌なことがあって立ち止まろうかと思っている。
で、そもそも何撮りたかったんだっけ?と答え探しに、想い出の地である尾道へいった。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48698804398
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48699318912
あと、いろんなことを思い出そうとした。
なんで写真やろうって思ったんだろうって。
憧れの大先生たち、石元泰博の言葉や森山大道の言葉を思い返していた。

そういや、「自分のカメラ」を初めて買おうとしている後輩に、いつものカメラ屋の主人が言っていた。
「これは良い趣味やと思うよ。でもね、一生懸命やれば必ず壁にぶつかるからね。絶対に壁はあります。でも、身近に頼れる先輩おるんやから何でも聞いて乗り越えて行ったらええやん」って。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48742746622
流れに身を任せてなんでも楽しく撮れると良いよね。


Ricoh GR GR Lens 18.3mm/f2.8

 記録としての写真

失われてしまうかもしれない何かを留めたいって思ったら、一番自分にとって簡単な方法は写真だった。
カフェイン中毒で偏頭痛に苦しむレベルでコーヒージャンキーな自分にとって、個性的なロースターが揃う京都はなかなかに幸せな街。
気に入ったロースターから豆を買って家でも淹れてるけど、そのうちの一軒が近々店を閉めてしまうと知った。
四条河原町の片隅にあることもあって、ライカ京都店にカメラを預けた待ち時間やポートレート撮影の休憩なんかでよくお世話になった。
何度も通っていたとしても、お店の人と必要以上のコミュニケーションをしないっていうのが何と無くマイルールなんだけど、今日ばかりは「もしかしたら来れるの最後かもしれないので、店内の写真を撮らせてください」とお願いして撮らせてもらった。

https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48565857602
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48565857772
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48565713356

京都らしい団扇もありつつ、SONIC YOUTHのレコードが飾られていたり、カウンターや壁の感じがバーっぽくて好きだった。
もちろんコーヒーも本当に美味しい。
そしてマスターの接客が本当に丁寧で大好きだった。
もっと行けばよかったとちょっと後悔もある。
ありがとう、MonoArt coffee roasters。
独特の雰囲気が京都らしくて大好きだった。

https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48565818086

Leica M Monochrom Summaron 35mm/f3.5

 この世界はそれほど腐ってはない

三人展「B.L.T」も無事終わった。
今回はいろんな人に来てもらって、感想をもらえたのが嬉しかった。
いつもながら、制作途中とか搬入直前とかって気分がもの凄く落ち着いてしまっていて、高揚感なんてないし、自分の中での批評性の高まりすら感じる。
ブルーな気分で始まって、ホッとして、反省して、次を考える。そんな感じ。


停滞していたくない。もっといろんなものが撮りたい。いろんなところへ行こう。
小さなお気に入りのカメラ一つ掴んで、街へ出よう。
世間様なんて関係ない。
自分の基準で自分のテンポで自分のお気に入りを、自分の思うまま。

https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48379573476
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48379717242
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48231305941
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48338486752
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48338487102

大前提だよ。
もっと面白くて楽しいことが見つかりますように。

Ricoh GR GR Lens 18.3mm/f2.8
Leica M6 Summicron 50mm/f2.0 Fujifilm X-TRA 400

 三人展開催に寄せて

明日、三人展の搬入作業がある。

年明けから取り組んでいたポートレートを暗室で悪戦苦闘しながら大全紙に焼いた。
今まで路上スナップしか展示してこなかったこともあって、全体的に白いなぁなんて思ったりしたけど、焼き込んだカットでは今までやって来たことが思いっきり活かされていて、自分自身の暗室ワークの上達も感じた。
ま、写真展のたびに進化して行ってなかったら悲しいしそれはね。


自分が写真を撮り始めたきっかけは純粋に旅に出掛けたくて、旅に連れて行くカメラを選ぼうと書店に行ってこの本と出会ったのがキッカケだ。

旅とカメラと私 ?RICOH GR/GXRと旅する写真家たちのフォトエッセイ?

旅とカメラと私 ?RICOH GR/GXRと旅する写真家たちのフォトエッセイ?

これ本当に良い本だ。今でもたまに読み返す。


モノクロフィルムで作品を作ろうと思ったキッカケになる人は二人。
一人は個展でお話しさせていただいたときに勧めてくれた中藤毅彦先生。
nowarl.hatenablog.com
もう一人は、初めて人に言うけど、味園ユニバースの某ショットバーのマスター。
ちょっとした出会いで人って変わるよね。


今回は、純粋に自分が心から撮りたいものってなんだろうって考えたときに、人が撮りたいって思っちゃったことがキッカケ。
人と絡むのってめんどくさいけど、面白い。普段を知らない誰かのカッコいいorカワイイ瞬間を撮れたら面白いだろうなって純粋に思った。


いろんなキッカケがあって、こんな面白くて手間のかかることをやって来ているけど、一人ではとてもじゃないけど、続けてこれなかった。
キッカケを与えてくれた人たち、被写体のみなさん、週末一人でカメラを抱えて出掛けて行く俺を黙って見送ってくれた相方、そして何より共催者の二人に感謝。
今回できなかったことや次回への反省もあるから、まだまだマキナ67とライカを背負って、時にはGRをポケットに忍ばせて街を歩き続けたい。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48152462331

 同じ調子を出したい

カメラに依存した撮影をしたくないっていつも思っている。
別にライカだろうがGRだろうが、極端な話iPhoneだろうが、同じようなトーン、同じようなコントラストの写真が撮れたら良いなぁと思っている。
イカMモノクロームも含めて、モノクロは同じソフトで現像しているので、それなりに揃えることが出来るようになりたい。
それが、自分の中での「美しいモノクローム」だと思うトーンだとなお嬉しい。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48097223701
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48029161481
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48023262071
プロの写真集なんかを見ていると、ずっと同じレンズ、同じカメラで撮影した人もいれば、てんでバラバラな人もいる。
同じカメラで撮影している人の方が多い印象だけど、全然違う撮影時期でも当然のようにトーンは揃えてきているし、それが個性だ。
被写体に恵まれることももちろん大事なことだけど、それと同じくらいどう現像するか、自分の頭の中のイメージにどのカメラも近づけていける力が欲しいと思う。


巡り合わせという言葉が結構好きで、どうにもならないことが続いているときは、どうにもならないねーっと軽いテンションで巡り合わないタイミングを過ごして行くことも必要かもしれない。
ずっと途絶えずにポートレートを撮影してきたけれど、ふと止まってしまった。
少し焦ってしまうけど、自分のペースに戻るタイミングだったのかもしれない。