知らないところへ行こう

怒涛の日々が終わった。
今年はとても忙しくて、B.L.T.こそなんとか頑張ったけど、それ以外に展示に出そうとかいう気にもならない。
あと、写真ギャラリーなんかにも本当に見たいものや興味があるもの以外にはあえて行かないようにしている。
「熱」がないのに行ってもあんまり意味がないなって思いからだ。少しでも熱があれば見に行こうとは思っているのだけれど。
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10月も11月も実はちょっとばかしの旅に行っていた。予定調和ではない、ほんとうの旅。
11月の旅はずっと昔から行ってみたいと思っていた西九州の街からさらに西の島でとても有意義だった。
もう少し体力があったら…と思うシーンもあったけど、まぁやれることはやった気がする。
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10月も11月も産業遺構みたいな場所に行ったんだけど、かつての成長期を知らない僕らからしたら、信じられないような話や遺構がたくさん残っていた。
いつかなくなっていくべきモノだと思うんだけど、そういうものをフィルムに残しておくというのが意味がある気がする。
そして何より、自分の足で歩いた場所と人から聞く話は全く別のものだということ。
多分もうなかなかいくことはないと思うけど、忘れられない旅だった。

 身体が資本というけれど

今年の夏はいろんなところに行った。
富山にも行ったし鹿児島にも行った。記憶を巡ると結構楽しいことが多かったのかもしれない。
でも、なかなか思うように動けなかったなと思う。
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鹿児島に行ったときに、一緒に行っていた人が流行り病に罹っていて、濃厚接触っていうことで自主隔離に追い込まれた。
その時は毎朝検査して体温を報告して…って日を何日か過ごしたんだけど、5類になったとか言っても、感染リスクが下がったわけじゃないもんな…と思うのと、医療体制も限られる地方の仕事だと都会と同じような話にはならないだなってホテルの中で思ったりしながら、過ごした。
結局のところ自分にはうつってなくて、最後に少しだけ指宿温泉に行ったりしたんだけど、それ以外は夜中にちょっとスナップしに出かける程度になったのは残念だった。まぁ、ある意味では良い経験だった。あんなにぼーっとすることないだろうし。
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なんにしても今年の夏は異常と言えるほど暑くて、カメラを持ってどこかに行って…なんて頭にはあまりならなかった。
いつものようにGRを持ち歩いてパチパチ…程度。
そのGR、去年の夏におかしくなって、今も騙し騙し使っている。
なんかたまに鏡胴がロックされちゃってうんともすんとも言わなくなるんだよね。モーターがおかしいのかなって思っていたけど、基盤の問題らしい。
GR2は今でも直してもらえるけど、GRは無理なんだって。ほとんど同じパーツなのに納得がいかない。
ま、あんま困ってないし許してやるか。
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今年のB.L.T.をやって、なんとなくいろんな「解」が生まれそうだったけど、まぁそんな帰結するものなんてなくて良いんじゃねーかなって思いなおした。
撮りたいものはあるんだけど、ちょっと撮れるかわかんないものが多い。巡り合わせ的な要素が強い。
まぁ、自分の半径5mくらいしか撮ってないから動くしかないんだけど。無理せずやっていこうかなと思っている。
久しぶりにPay money To my Painのライブ映像を見ていたら、Kが「無理せず毎日ちょっとずつで良いんだよ」ってMCで言っていた。そういや、忌野清志郎もおんなじこと言ってたなって懐かしかった。

 Keep Shooting

年に一回、自分たちのやりたいテーマで展示できたら楽しいよなってノリで始まった展示。
このタイトルでやるのは5回目、その前にカフェのテラススペースでやったのも含めたら6回目になる。

今までは女性を撮った写真を並べていたのだけど、今回は原点回帰というかスナップを並べる。
大全紙に引き伸ばすと、写真の情報量が小さなフォーマットよりも増える。今回はたまたま135判で撮ったものばかりで、いつも撮っているエリアで撮った写真ばかりだ。
どこかにわざわざ撮影しに行った写真よりも当たり前のように撮っている街を並べる方が良いんじゃないかなって思っていたら、割とみんなそれぞれの「いつも」を出してきたのが面白かった。大全紙直張りという見せ方はなかなかストイックかもしれない。
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手焼きのモノクロームを続けてきたからこそ、わかったこともたくさんある。
人が言葉にして教えてくれることよりも、自分でやってみて理解したものの方が強いと信じている。
この展示はその答え合わせでもあるし、祝祭でもあるし、踠きでもあるし、足跡でもある。
be-lab-gallery.com

 気がついたら6月が終わっていた

6月があっという間に過ぎ去ってしまった。
大事な時間はあっという間に過ぎてしまう。
変わらないでいてほしいって気持ちが最近どんどん強くなっていくけど、変わらないものなんて何もない。

近くに川もないのに何故か庭の塀の隙間にアマガエルがいた。
お前どっから来たんだ…って可愛い背中を撮った。

もう10年近く使っているGRが調子悪くなって、いよいよ新しいGR買おうかなって気運が高まったけど、結局買わなかった。
なんか違和感を感じた。

いろんな違和感を抱えながら生活している。
写真を通じて、知らない世界を覗きたいなって思う。
知らない世界に踏み出す言い訳っていうかきっかけ作りに時間とお金を使いたい。
撮りたいものはまだいろいろある。

 どうせ行くなら旅に行きたい

コロナが5類になったからとか関係なく、遠くへ行く出張が続いている。
ひとりで行く感じの出張だと話をする相手もいないから、バーに行ってウイスキーを飲む以外は空き時間はずっと写真を撮っている。そんなときは基本的にはフィルムカメラなことが多い。ゆっくり自分と向き合いながら撮る写真。
人生で初めて行った鹿児島は最果て感があって良かった。
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一方で誰かと一緒に行くときには写真は二の次になる。一時期はGRをずっと持ち歩いていたけど、もっとジャンキーなカメラでも良いよなって気になって、今はGRD4をカバンに放り込んでいる。移動中に見えた景色をぱちぱち撮っている。あんまり何も考えずにひたすら撮ってるんだけど、それが結構心地よい。
デトックスな気分。写りすぎないのも良いのかもしれない。歩留まりなんて全然気にしない。気に入った写真が1枚でもあれば十分。
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本当はスケジュールの決まっている出張なんかじゃなくて旅に行きたいんだけど、まぁそれは仕方がないかな。
自分の写真のために使える時間って結構限られてくるもんだから、その中でどうするかでしょ。
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「マキナとかライカとかよく写るカメラを持っているのに、コンパクトカメラで撮った写真をプリントしてるのは結構信じられない」ってことをちょっと前に人から言われたんだけど、写真撮りに行ってるわけじゃない中で無理なく写真が楽しめる道具を選んでるだけ。
写りは重要だけど、それがマストじゃないと思っている。

 ほんとうの世界

PENTAXがモノクロ専用カメラを出した。
以前、PENTAXのイベントに行ったときにtyp246をぶら下げていったことから、中の人と少しモノクロ専用カメラの話をして、あぁこれ多分試作機くらいは出来上がってるんだろうなって思っていたから、出たことに全く驚きはなかった。
ほんとうのモノクロームが撮れるカメラは稀有な存在だし、とてもほしい。
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モノクロ専用センサーの何がすごいって階調性だと思っている。カラーセンサーの入っているカメラではなかなか再現できない中間トーンのグレーの美しさはすごいの一言だ。コントラストの高いモノクロームを作るのだって何するのだってベースで出てこないトーンはどうしようもない。
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精神性も違う。
そもそも自分はほとんどモノクロ写真しか撮らない。RAW現像派なので”いつもの感じ”で現像すればそれなりに同じようなテイストでカラーセンサーのカメラでも作れる気もする。
でも、圧倒的に違うのは撮っているときの気持ちだ。光を探すようになるし、色に引っ張られない。色が映らないことで見える世界は本当にある。
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銀塩オリジナルプリントが欲しいなって思っていて、少し前にとても綺麗なプリントを購入した。
毎日眺めているけど、銀塩ではもちろん、デジタルでもここまで綺麗なプリントが出来るのだろうかという気持ちになる。
いくらデータがすごい綺麗だとかいってもプリントしなかったら写真としての価値はどうなのだろうという気持ちが強い。
ほんとうのモノクロームを追求していったら、たぶん銀塩になってくるんじゃないか…そんな気がした。
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機材なんてどうでも良いと思ってるから機材書くのやめているけど、今日は機材の話しちゃったから。
上から3点、Leica M Monochrom typ246 , Summicron 50mm/f2(3rd) , Elmar 50mm/f2.8 , Elmarit 28mm/f2.8(4th)
4点目、Leica M2 , ULTRON Vintage Line 35mm F2 Aspherical , Ilford HP5 Plus
5点目、Plaubel MAKINA 67 , Ilford HP5 Plus

 いつか歩いた道と三月

周りの人たちが大きな決断をしたりしているのに自分はなんだか同じような日々を送り続けていて、これで一体いいんだろうか…。
そんな気持ちで最近ずっと過ごしてきた。
何かを変えたいという気持ちより、変えたくないという気持ちが勝ってしまう。良心的な価格を維持してくれていたサイバーグラフィックスがハーマンの代理店契約を切られてしまって、アナログなモノクロ表現も少し悲観的な状況になった。
なんのためにバカみたいに歩いてなんの価値もない写真を撮り続けているんだろう…。そんな気持ちにもなって、フィルムで撮ることをやめようかなってちょっと思ったりしていた。
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今日は親友の命日だった。
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最初は全然知らない街でスナップでも撮ろうかなって電車に乗って知らない街を撮っていたけど、全然撮れなくて、「こんなの撮りたいんじゃないんだ俺は」って気づいた。電車で戻って、毎日彼と一緒に歩いていた何でもない道を歩いた。
あぁ、ここって昔は喫茶店だったよな、とか、ここでチャリ盗まれたよな、とか、ここの店員のこと気に入ってたな、とかさ。
いろいろ思い出が溢れてきて、もうこの世からいなくなって数年経つのに鮮明さにびっくりした。
それではっきり自覚した。
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俺そういうの残しておきたくて写真撮ってたんだわ。でさ、多分それずっと残したいのよ。目に見える形で。
だから、まだ続けるわ。もう少しこっち側で頑張れるわ。