この頃の写真生活 

フィルムライカとライカレンズのみの企画展に出展していた。
この縛りの展示に出すのは2度目だけど、前回もすごくレベルが高くて気合入れて暗室ワークをしたことを思い出しながら今回もちょっと気合を入れて頑張った。ちょうど撮りたいテーマと作りたいイメージが明確にあったから久しぶりに写真楽しい!って思いながら暗室ワークできた。
ゆらめく現像液のバケットの中から浮かび上がる旧い社交街の路地裏が怪しい雰囲気で最高だった。

参加するまでLeica M6とズミクロン50mmばかりを使っていたから、いよいよ解放された気持ちになってマキナ67を持って出たらいきなりストラップ金具が脱落した。
しかもストラップ金具はフィルム室まで貫いていたので感光までしてしまってダブルパンチ...。本体が落っこちなかっただけよかった。
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速攻で修理に出した。マキナ67、2度目の入院。


コロナウイルスの影響で円高になった間隙をついて25本イルフォードのロールフィルムを買った。
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B&Hといえばアメリカンスタイルな梱包で割と発送業務も緩やかなイメージだったけど、コロナ対策で店舗閉鎖の前日だったこともあったのかものすごく早い対応でびっくりした。
今回の買い物で35mmも40本、120も20本ほど確保できた。ちょっと流石に欧米各国の感染状況が洒落にならない中、入手経路も心配だったからよかった。


ちょっと終わりが見えない不安があるけど、気ままに写真撮っていられる世の中であってほしい

 Voigtlander ULTRON Vintage Line 35mm F2という選択肢

はじめてのノンライツかと思っていたけど、Leica M6を買ったときにカラースコパーをボディキャップがわりに持っていたことを思い出した。だから今回は2度目のノンライツ。
イカのレンズはライカのボディで使わないなら野暮だと思っているし、その逆もまた然りだと思っていたから、それなりに欲しいなって思うレンズはあったけどスルーしていた。
このウルトロンはフードも含めて好きな見た目だったことと、開放値がF2というのも好ましいなと思っていた。

M2につけてみてもそんなに違和感はない。

実際に撮ってみると、ちょっと笑ってしまうくらい開放付近で周辺減光する。たとえば開放で被写体を画面端に配置した場合なんかは露出補正で+1.3とかしていた。途中で気づいて出来るだけ画面の中心に据えるようにしたけど、35mmF2で自分がイメージしていたのはズミクロン的な写りだったから正直これはかなりがっかりポイントだった。

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▲F2.0 開放   ▼F5.6
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あとで8枚玉オマージュと知ったが、8枚玉こんなに周辺減光するなら合わないなと思ったほどだ。
色ノリはこってりな印象だった。あくまでこの辺は現行レンズだなぁと感じた。
解像度は非球面レンズを採用していることもあって、手持ちのレンズの中でも文句のつけようがなく良かった。

結局のところ、メインで使っている6枚玉を追いやるほど気に入っているわけではないが、小ささとどのライカボディにも似合うことから、意外と出番が多いレンズとなっている。「少し明るいズマロン」と思ってしまえば、周辺減光も納得できた。
このレンズの解像度に慣れてしまうと、他の35mmを使って撮った写真を見てみると、え、眠くない?って思うレベルなのは間違いがない。
よく、ノンライツな記事のレビューを読むと、コスパがどうのこうのっていう下りが多い気がするが、このレンズは値段関係なくいいレンズだと思う。
イカというブランドが好きな人はもちろんライカを買うべきだと思うし、最初の1本はやはりライカのレンズを選ぶべきだとも思うが、このレンズはとてもいいなーとしみじみ思う。

以下このレンズで撮った写真たち
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 まとめきれない2019

こんなに長い一年久しぶりだったなーと思うくらい色んなことがあった一年だった。
写真関係で言えば、3人展「B.L.T」にむけてポートレートを撮り始めたこと、その延長で今更ながらTwitterを始めたこと、3人展が思いのほか好評に終わったこと、あこがれている写真家さんと再会できたこと、いろんな写真関係の人たちと出会って楽しかったこと、いろいろ数えればキリがない。
機材の面でいうと今年は驚くべきことにレンズもボディも何も買わなかった。
※よくよく考えてみたらGR1sを買っていたw
正直、経験に投資したいって気持ちがめちゃくちゃ強くなったのと、もっと持っているカメラを使い込んでやろうって気持ちになったから。
その甲斐もあってか、自分的にはけっこう色んな事やったなーって気持ちが強い一年だった。


上半期はとにかくマキナ67でポートレート撮って暗室で焼いてた。バライタ大全紙でギャラリーを埋めたのはほんとに良い思い出。
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下半期、ちょっと暗室に入る時間が減ってしまったのは残念だったなーと思う。アクロス2が秋口に出ると見込んでフィルム買い込まなかったから、だれが悪いって富士フィルムが悪いと思う...笑
やりたいことをもっと突き詰めるのと、継続し続けたい。
来年もまた写真展をする。もっとカメラ片手にノープランな旅がしたい。いろんなものが撮りたい。
やりたい衝動・目標を現実にしていきたい。

最後に今年の気に入っているモノクロームを。
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デジタルだろうがアナログだろうが、カメラがなんだろうが、来年も楽しい写真生活を送りたい。
では、よいお年&よい写真生活を。

 ひとつで終わりたい

今、手元にあるカメラが何台あるだろう。
人によっては洋ダンスのような防湿庫の中に満載っていう人もいるだろうし、いやいや、一台だけですよって人もいるだろう。
初めてカメラを買いに行く人についていく機会があったけど、じつはレンズ一本とボディ一つだけで写真ってずいぶん楽しめるよねって思った。
よく、カメラを買う人に「何を撮るの?」って聞く人がいるけど、野暮にもほどがあるでしょって思う。
何を撮りたいかなんて決めて写真撮ってる人がどんだけいるんだよってね。
好きなカメラ買えばいいんだよ。で、その一台をずっと使い続けることが写真うまくなる一番の近道だと思う。

https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/49186698531
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/49186200408


自分にとってスペシャルな一台をもって街へ出よう。
一台で終われなかった不幸な皆さん、その日ご機嫌に過ごせたカメラがあれば「あー、これだけあればほんと他はいらないわ」って一瞬思うよね。
一瞬ね。
あぁ、ひとつで終わりたかった。

 それ、プリントしたらどうですか?

SNSやWEBに溢れる写真って、ふとした瞬間に流れていって「あの素敵な写真は何処へ…」となることがある。
「いいね」から辿ろうとしても、例えばそれが半年前のものだったら大変。つい最近、実際にふと「あの人のあの写真見たいな」と思うことがあったけど、結局探し出せなかった。
溢れて消えていく「名残惜しい写真たち」の中から、せめて自分の撮ったものだけでも繋ぎ止めるためにはどうしたものか。
自分はやはりそれはプリントしかないと思っている。
モノとして残る強さっていうのは確実にあると思っていて、いつか見返したい写真は積極的にプリントするようにしている。
撮ったけど、何にもなれていないただのデータって意外とあるでしょう?
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48923517042
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/49003665271
Leica DII Summer 50mm/f2.0 Ilford HP5Plus
Plaubel MAKINA67 Nikkor 80mm/f2.8 Ilford HP5Plus

プリントするかしないかっていうフィルターがまずあって、プリントしたものを残すか捨てるかのフィルターがあって、それを部屋に飾れるかどうかっていうフィルターがかかっていくと、それなりに残っていくものはその時の自分の写真の到達点だと思う。
自分の場合、暗室でほぼ全てが完結するのが楽だからフィルムで撮影したものをプリントすることがほとんどだけど、最近、結構会心だなって思うカットをiPadで人に見せたら「それ、プリントしたらどうですか?」って言われてしまった。
そりゃそうだな。デジタルだろうが印画紙に焼き付けてしまえば写真は写真なんだから。

 ドキュメンタリー

中平卓馬ドキュメンタリー映画を見る機会があった。
ちょうど中平卓馬の写真集をもらったこともあって、相方さんから勧められたんだ。
実は勧められたのは二度目なんだけど、中平卓馬の写真が今までずっと「怖い」と思っていたので一度断った。
でも、結局見て、とても感動してしまって泣きそうになった。


「カメラになった男 写真家 中平卓馬
この中で自分が一番感動したシーンは、沖縄で東松照明の写真展の題目であった「写真の記憶と創造」を激しく批判した場面。
写真はどこまでもドキュメンタリーだっていう姿勢が写真に対してピュアだった。
森山大道も「写真は現実のコピーだ」っていうことを言っていたけど、個人の表現・創造のための写真が巷に溢れかえっている中、中平卓馬の姿勢は痛快だった一方で、突きつけられている気持ちになった。


何を撮るとか、何で撮るとか、誰が撮るとかではなくて、もっと生々しいものが大事なんだと思った。
超抽象的だけど。
山盛りのリバーサルフィルムが映されていたけど、やっぱり数のないところに質はないんだよ。

https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48814969012
帰りに京都大学熊野寮の前を歩いていたら”粉砕”された立て看が束になっていた。


もっと剥き出しの写真が撮りたい。撮れるようになりたい。

 「必ず壁にぶつかるからね」

最近でもないけど、自分の撮りたかった写真ってなんだったんだろうって考えることが多い。
あと、本当に楽しく写真撮れてる?って。

写真展をやって疲れたってのはあるけど、継続して撮り続けていたんだけど、嫌なことがあって立ち止まろうかと思っている。
で、そもそも何撮りたかったんだっけ?と答え探しに、想い出の地である尾道へいった。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48698804398
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48699318912
あと、いろんなことを思い出そうとした。
なんで写真やろうって思ったんだろうって。
憧れの大先生たち、石元泰博の言葉や森山大道の言葉を思い返していた。

そういや、「自分のカメラ」を初めて買おうとしている後輩に、いつものカメラ屋の主人が言っていた。
「これは良い趣味やと思うよ。でもね、一生懸命やれば必ず壁にぶつかるからね。絶対に壁はあります。でも、身近に頼れる先輩おるんやから何でも聞いて乗り越えて行ったらええやん」って。
https://www.flickr.com/photos/126161047@N02/48742746622
流れに身を任せてなんでも楽しく撮れると良いよね。


Ricoh GR GR Lens 18.3mm/f2.8